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同性婚で許可されるビザとは
2022.10.10
先日、東京地裁において、同性婚のビザについて、画期的な判決がなされました。
https://www.asahi.com/articles/ASQ9Z4F7XQ9QUTIL029.html
これは、アメリカ国籍の方が、日本人の男性とアメリカで婚姻の届出をし、入管に対して、ビザの変更申請をしたが、(定住者も特定活動も)許可されなかったケースです。
記事の判決内容によると、
①外国人同士の同性婚のケースであれば、配偶者に「特定活動」のビザが付与されているのに、日本人と結婚した外国人配偶者に付与されない国(入管)の運用は「憲法(14条)の平等原則の趣旨に反する」という結論 ②当該外国人の男性に「特定活動」のビザを認めなかったのは違法 ③「定住者」ビザの申請が認められなかったが、日本においては同性婚を認める法規定がないため、配偶者と同視はできない(それについては仕方ないというニュアンスの判断)
■運用上は、どうなっているか
上記の①、②については、確かにと思うところです。
日本人と同性婚をする場合と、外国人同士で同性婚をする場合において、差が生じることに合理的な理由はないと言えます。
入管は、在留資格を持って、日本に滞在している外国人と、同性が結婚した場合(日本では婚姻届はできませんが)、当該外国人に対して、人道的配慮から「特定活動」という形でビザを許可する運用を行ってきました。一方で、日本人との同性婚のケースは対象としていなかったということが問題になったわけです。
■「定住者」ビザは認められない
「定住者」についても、告示内と告示外で分類されますが、人道的配慮から、告示外定住という形で認められる余地はあるかもしれません。
しかしながら、日本において同性婚を公的に認める法律上の規定はありません(パートナーシップ制度は別として)。
「定住者」ビザが認められれば、永住申請の原則10年在留に関する特例として、「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していることという要件から、「永住者」ビザを取得する近道となります。
ご本人もその点を十分理解されている上で、当初「定住者」ビザの申請をされたものと思われます(「経営・管理」ビザの維持が難しくなったというのが大きな理由のようですが)。
記事上の判決内容は、同性婚を認める規定がないからという理由になっていますが、個人的には、経験上、以下の点が、そこまで踏み込んで積極的に認めることができない理由なのではないかと考えます。
■偽装結婚(偽装同性婚)の端緒になるのを防ぎたいのではないか?
件のお二人は、長年、親密に交際を続けながら、真摯な合意に基づいて結婚をされたのだと思いますし、幸せに、日本で生活をして頂けたらなと思います。
一方で、「日本人の配偶者等」ビザ、あるいは「定住者」と結婚をした人の「定住者」ビザ、「永住者」と結婚をした人の「永住者の配偶者等」等において、偽装結婚と思われるケースが多発しているのも事実です。
「定住者」ビザは認められないという点については、婚姻生活の実態に疑義があるものを、入管が厳しく排除してきたというところに、その理由があるようにも感じます。
もし、仮に、今回のケースで「定住者」ビザを認めた場合には、また新たに「永住者」ビザへの近道として、日本人にコンタクトを取り、形だけ、外国で同性婚の手続きを行い、申請を行うケースが増える蓋然性もあります。
入管としては、人道的配慮から、同性婚の人に対して、「特定活動」ビザを認めるという運用は行いつつも(今後は、日本人との同性婚の場合も許可するという運用になるでしょうが)、安易に、永住申請の期間短縮という点までも認めることはできないという運用を続けるのではないでしょうか。
判旨については、まだ弊所においても原文の確認ができていませんが、そのような行政運用、社会的状況を考慮した上での判断であれば、画期的かつバランスが取れた判決として、高く評価されるべきものだと感じます。