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特定技能制度は使いやすい?
2022.4.16
さて、特定技能という在留資格の運用が2019年4月から始まり、それなりの期間が経ちました。公表されている統計を見る限り、一部の産業を除き、まだまだ政府の思惑どおりには浸透していないという印象がぬぐえません。
入管への取次だけでなく、登録支援機関としてのサポートを行っている身として、「そりゃなかなか浸透しづらいよな」と、実感している次第です。
端的に言えば、「特定技能制度は簡単には利用しづらい」という一言に尽きるわけですが、なぜ、そのように感じているかと言いますと、
★制度が複雑すぎる
というところでしょうか。特定技能1号(一部2号もあり)と言っても、建設、造船、外食、農業等、業種は多岐に渡ります。例えば、農業で特定技能1号を取得したいとなると、入管へ申請書類の提出を行うのはもちろんですが、その際、農林水産省の別冊要領も確認し、上乗せの要件がないか等、確認が必要となります。いわゆる縦割りの弊害があるとも言えます。仕方のないことではありますが。
特定技能の在留資格を取得する際には、本人が要件を充たしていないともちろんダメなわけですが、大きなところだと、
- ①技能実習2号を良好に修了している
- ②特定技能測定試験に合格+日本語能力N4に合格している
いずれかのルートを経る必要があります。
また、雇用を行った場合、会社は、当該外国人の支援、年四回の定期報告、随時報告など、義務となっている煩雑な手続きに追われてしまいます。このため、実際には、法務省の認定を受けた登録支援機関へアウトソーシングするパターンが多くなっています。※なお、ビザを取ってからアウトソーシングではなく、委託契約を締結した後でなければ、そもそもビザの申請ができません(もちろん、自社で支援体制が構築できている場合、自社で行うことを認めてもらえれば、アウトソーシングする必要はありません)
これに加えて、受け入れ後4カ月以内に、その産業分野の特定技能協議会への加入も行う必要があります。
このように非常にボリュームがあり、継続的に行うべきことも多いため、会社側が敬遠してしまうということにもなりかねません。
★会社側からすると、費用がかさむ
上記とも関連しますが、会社側は、以下のように、費用がかさみます。
- 在留資格申請時の行政書士等へ支払う報酬(自社で行うことも可能ですが、在留資格の申請の中でもかなりしんどい部類と言えます)
- 登録支援機関に月額数万円程度委託費を支払う必要がある
- 人材紹介等を介した場合には、それにかかる費用もかかる
- 建設業の場合は、特定技能協議会においても、費用がかかる
このように、手間だけではなく、金銭的な負担も発生する要素が多いと言えます。人材の確保に苦慮している会社様は多いかと思いますが、ある程度の事業規模感がないことには、人件費+特定技能に関する費用が毎月かかるため、特定技能外国人の採用を躊躇することにもなりかねません。
ただし、給与を日本人と同等レベルで支払っていることもあり(この点、申請において重要なポイントとなります)、とても熱心に働いてくれる、離職の確率もかなり低いというメリットもあります。このため、むしろ日本人より、積極的に特定技能での外国人採用を行っている会社様がいらっしゃるのもまた事実です。
★ビザ専門の行政書士にとっても大変な申請です
なお、私が、特定技能制度の開始直後に、特定技能1号(外食)への変更を受任した際には、最も多い東京でもまだ41人しか取得者がおらず、全国でもたったの100人しかいませんでした。制度が始まってからそれほど経っていなかったこともありますが、制度が複雑で、かつ許可の前例が少なく、さらには、書類の量が多いとなると、専門家としてもなかなか快諾しづらいところもあったものと思われます。
また、こちら側(行政書士事務所側)が、登録支援機関としての支援も同時に行っていない場合には、会社様にとっては、日常的な連絡や相談をどこにどのように行っていいのかわかりづらい部分もあります。そのような点も含め、登録支援機関としての体制が整っていない状態(登録支援機関としての登録を受けていない事務所の場合)では、なかなか受任しづらいという側面があるのもまた事実です。
ただ、特定技能として雇用したいという需要そのものは高いものがあるため、このあたりの課題が徐々に解消されていけば、今後、より浸透していくものと思われます。弊所としても、より使いやすい制度として浸透することを願っていますし、登録支援機関としてワンストップでサポートを行い続けることで、制度の定着に寄与したい所存です。