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貿易業で「経営・管理」ビザを申請する場合の注意点
2022.5.21
弊所において、経営・管理ビザの申請で最もご依頼が多いのは、貿易業です。
実際、入管の審査官の方などから、貿易業での申請は非常に多いときいたこともあります。捉え方によっては、その分、しっかりした事業計画や、事業の安定・継続性が疎明できないと、不許可になる確率も上がってしまうということです。
ペーパーカンパニーでの申請もありうるから審査が厳しい
会社設立を行ったとしても、例えばバーチャルオフィスなどで、事務所が確保されているとは言えない場合や、事務所を賃借しているものの、実際には、事務所を自由に使用できる権原がないというような場合。
このような場合、会社はいわゆるペーパーカンパニーに過ぎず、安定・継続的に事業が営まれるという点に疑義が生じ、ほぼ確実に不許可となってしまいます。
日本人が事業を行う上では、バーチャルオフィスなどは、ひとつの有益な方法と言えるわけですが、経営・管理ビザの申請との関係においては、非常にまずい状況を生んでしまうのが現状です。ビザの審査は非常に厳格ですので、事業所が確保できていないと誤解されるような方法はできるだけ避ける必要があります。
「ドン・キホーテで仕入れをします」だけでは不許可になる可能性が高い
上記のとおり、事業の安定性・継続性があると評価されることが重要です。したがって、貿易事業を実際に行うのであれば、仕入が安定的にできて、卸売先なども確保できている(少なくとも安定的な仕入れと販売の目処が立っている)ということを、入管に理解してもらう必要があります。たまに量販店で個人的に購入して、ネットで販売しますという事業計画では、安定性に欠け、説得力が非常に弱くなってしまいます。
ドン・キホーテで購入した製品を、ウィーチャットで販売するという形でも許可が取れたことはありますが、申請人の方に、卸売することも検討してもらい、実際に、本国の貿易会社に卸売りすることを決定して、継続的な取引契約を結んだことが、許可の大きな要因となったという事情があります。
※ドン・キホーテを例に取っていますが、仕入れ先のひとつとして利用することはもちろんNGなことではありません(仕入をそれなりに安く済ませることができるという側面もあります)。
【まとめ】貿易業で重要になるポイント
資本金の組成過程など、経営・管理ビザが許可されるための他のファクターはともかく、
貿易業で重要になるポイントは以下のとおりです。
①仕入の継続的取引契約ができているかどうか(あるいは商談過程でその見込みがあるかどうか) ②販売が安定的にできるといえるかどうか(ネットでの販売はやや説得力に欠けるところがあります。できれば、BtoBでも販売が安定的に可能である=卸売の継続的取引契約ができているか少なくとも見込みがある、という疎明も行う方がベターです) ③在庫の管理をどうするかについて、きちんと説明を行う ※通関業者を利用するのが通常なので、その点についても説明を行う必要があります。自社で大量に在庫の管理を行うのであれば、それなりの事務所スペースや、倉庫の有無についても説明する必要があります
【補足】自動車部品の貿易の場合
結構多いのが、中古車等を購入し、解体後、その部品を日本から輸出するというパターンです。
このような場合には、以下の点についても注意が必要です。
①中古車の解体作業自体は、申請人の経営・管理ビザで許容されるものではないため、それらを行う従業員の確保が必須 ②買い取った中古車を一旦、解体および部品輸出の準備のために、保管するスペース(ヤード)が必須 ③古物商の許可を得る必要(少なくとも許可の見込)がある ~ビザの申請後(許可後)~ ・当然、業として輸出入する場合に該当するため、原産地国の証明や部品1つ1つの特性を税関から求められることになる。したがって、事業を継続的に行う場合、当該資料を集めること(制度の理解)が必要となる ・自身(自社)が商工会議所で輸出入の登録を受ける必要がある ・産業廃棄物と同様、バーゼル条約による制限につき、環境省に事前相談を行わないといけないケースがある
といった具合になります。
結局、貿易業は許可が取りやすいのか?
貿易事業は、従前の本国でのパイプを活用し、海外から日本にやってきて始めやすい事業ともいえるわけですが、始めやすいということと、許可が取りやすいということはイコールではありません。
始めやすい事業であるのはいいことなのですが、それ故に、入管への貿易業での申請が多いということもあり、やや厳しく審査されているという実感もあります。貿易業で許可に至ったという実例は、弊所においても割合多いのが現状ですが、これは、貿易業なら許可が取りやすいという意味ではありません。
飲食店を経営する場合は、実店舗の契約や許認可が必要であり、その事業の実態につき、入管は実地での調査(店舗の確認)を明確にしやすいという側面があります。一方で、貿易事業はスタートしやすいメリットがある反面、飲食店に比べて、事業実態について疎明の難易度が上がるデメリットがあるとも言えるわけです。